株式会社塚田牛乳
代表取締役社長 塚田 忠幸 様、取締役経理部長 斎藤 隆介 様
明治34年創業(創業124年)。新潟市江南区に本社を構え、牛乳・乳製品の製造販売を展開。
学校給食の牛乳で馴染みがあり、様々な製品を含め地元に愛されている企業です。
経営理念、価値観を刷新し、更なる成長に向けて挑戦をされています。
2023年よりご縁をいただき、当社のご支援についてお話しを伺いました。
支援のキッカケと改善への着手
塚田
最初は計画策定の支援として金融機関よりご紹介いただきました。谷井さんは当社のある場所が地元でもあり、小学生の頃工場見学にも来ていただいたなど、とても親近感が沸き一気に距離が近付いたのを覚えています。
谷井
塚田牛乳は地元の誇りですからね!ご縁をいただき、とても嬉しかったことを記憶しています。最初は計画を作らせていただいて、無事金融機関より融資いただきました。その後、最初に取り組んだのは値上げですね。
塚田
当時、原材料等の高騰に伴う値上げに向けて準備していたところでした。値上げ額も決定していましたが、原価も見ながら本当に価格が適切かを一緒にみました。また、取引先別の利益を集計していただき、赤字や薄利取引の改善も行いました。
斎藤
赤字や薄利取引の改善は以前からテーマに挙がっていました。ただ、実行されずそのままになっていました。他にも課題の認識はあるけど、優先順位付けや具体的な行動計画までは考えられていなかったので、一緒に整理していただきましたね。
(左)斎藤隆介 様 (右)塚田忠幸 様
営業体制の再構築
谷井
値上げ交渉後に着手したのは営業体制の再構築でした。
塚田
そもそも営業として何をやらなければいけないのか棚卸をしました。そのうえで、営業の採用に踏み切り、谷井さんには面接にも立ち会っていただきました。採用をキッカケに営業部としての統一ルールを作ったり、金曜日の定例ミーティングを新設したりしてコミュニケーションの機会を増やしていきました。また、会社を離れ2日間会議室を貸し切って私と斎藤さん、谷井さんの3人で営業部として大切にしたい価値観を作る合宿もしました。
谷井
価値観の作成は営業部で頑張る人が報われるための基準を明確にする目的でした。でも、最初にやったのは社長や斎藤さんの人生をたな卸して、どんなことに喜怒哀楽を感じるのか、会社の価値観の前に個人の価値観を明確にしました。
塚田
自分の過去を整理したことがなかったので、新たな気付きがありました。3人で作成した価値観を営業部の社員に共有し、言葉や表現など最後の仕上げは一緒にやりました。社員も納得感のある価値観になったと思います。
経営会議の見直し
斎藤
以前は会議で翌月までにやりましょうと決めても、翌月確認したら何も進んでない状況でした。
谷井
今はどうですか?
斎藤
課題は沢山ありますが、着実に1個、 2個ずつ進んでいる感じはあります。
谷井
元々は営業主体の会議でしたが、会社の全体を把握することを目的に各部門の責任者が参加する形に変えていきました。
塚田
会議の都度、各部門の問題点が上がってくるようになりました。「うちの部門の課題はこれで、次までにこれをやります」と、部門主体で動いてくれるようになっています。風通しが良くなったと感じています。
谷井
会議体の運営を変えて1年が経ちますが、最近は部門間で議論したりアイデア出ししたり、建設的な議論がされていることを強く感じます。「どうやったらできるのか」「これが課題だったのでもうやりました!」、「これだけ改善成果が出ました!」という報告が毎回あり、素晴らしいなと感じます。
利益改善について
谷井
私が入らせていただいた時は10年近く赤字が続いている状態でした。それが2年で黒字化しました。一番大きかった要因は何でしょうか。
塚田
値上げは一つあるでしょうね。あとは不採算取引の徹底見直しや経費削減も徹底しました。
斎藤
あとは直接利益と関係はないですが、現場も含めて前向きな人が増えました。会議のメンバーを変えて、その後にもプロジェクトミーティング(部門別の改善ミーティング)をスタートさせました。今までは現場社員のコミュニケーションの場がありませんでした。それからまた変わった感じもありますね。
塚田
現在、人事評価制度(Lポジション®人事制度)構築のプロジェクトメンバーもそうですが、今まで議論する場に社員が出る機会を作れていませんでした。議論の場に出てくるようになって、発言するじゃないですか。社員の発言を聞いて、会社のことを考えてくれているのだなというのを、経営者として知れる場にもなっています。
谷井
実際、現場の人が会社や仕事のことを考えていることを知った時は、社長としてはどう感じましたか?
塚田
嬉しかったです。まだ若いのにそこまで考えているのかという社員もいますし。部門単位で話をする機会ができています。風通しの良さっていうのが徐々に出てきていると感じます。
※「Lポジション®」はドリームサポート社会保険労務士法人の登録商標です。
※株式会社フォンテパートナーズはドリームサポート社会保険労務士法人から認定を受けた「Lポジション®コンサルタント」です。
経営理念の発表
谷井
営業部としての価値観を作成した後に、会社全体の価値化、経営理念の刷新についてもご支援させていただきました。先日、今期の経営方針発表の際に経営理念の刷新と会社全体の価値観を社員の皆様に向けて発表されました。その後、社員の方々からの反応はいかがですか。
塚田
いろんな人から聞くのは、あれを聞いてやっと社長の言っていたことが分かったみたいです。伝えているつもりでも、伝わっていなかったというのが分かりました。意外な人もエンジンかかったりしてびっくりしました。やる気スイッチが入ったみたいで、嬉しいですね。
谷井
素晴らしいですね。アクセルを踏む準備はできているのに、ブレーキがかかっているというか。そういう方もいたのでしょうね。
塚田
そうですね。会社としても、明確な目標を示せていなかったので。今回それが出てきて、「やる気が出ました」と社員から言ってもらいました。
谷井
いいですね。ここからまた人事評価制度を作っていき、評価軸ができた時により密なコミュニケーションが必要になります。管理者としては大変ですが、会社の目標を目指してもらうだけではなく、個人の目標まで明確にし、「自分がやりたいことと、会社がやりたいことって一緒なのか。」という風に感じられると、更にアクセル踏まれると思うので、今後の成長をとても楽しみに感じています。
経営理念、価値観の策定
谷井
経営理念と価値観の作成に踏み込まれたのは、どの様な理由だったのですか?
塚田
谷井さんが作りましょうって言うから(笑)
。正直、最初はちゃんと働いて欲しい、そのための基準を作るという気持ちもありましたが、経営理念や価値観を作ってみると自分も色々な気付きを感じています。特に言葉を慎重に選ぶようになりました。表現合っているかなとか、受け取る人はどう思っているだろうとか。
谷井
経営理念や価値観は、従業員の人の基準というイメージが強いですけど、実は経営者の基準ですよね。ものごとを決める時、経営者が正しいのではなく、理念や価値観が正しいと。
塚田
どうしても感情的になる時はありますが、経営理念や価値観に立ち返るようにしています。あとは、正しいことを正しく言えないみたいな雰囲気が会社にあったのが、会社の方針を明確に打ち出したことで社員は安心したと思います。
谷井
経営理念を「酪農業に貢献し、牛乳や乳製品を通じて関わる社員と顧客に健康と幸せを届けます。また、日本の酪農業に寄与できる企業を目指します。」と刷新しましたが、その背景や思いはどんなところにありましたか?
塚田
当初の理念は景色となっていて、誰も見ていないものになっていました。元々、我々は酪農からスタートしています。今、塚田牛乳が牛を飼っているわけではない。酪農家さんがいないと成り立たない業種です。酪農家さんたちと、一緒に協力してやっていこうという意思を表しました。
谷井
経営理念をまずは幹部との経営会議で先に発表されましたね。「社員や顧客に健康と幸せを届けます」という言葉が入っていますが、社員の方がそれを聞いて「社長は私たちのことをこんなに考えてくれていたんだ。」と目に涙を浮かべられていたのが、今までの中で最も印象的なシーンでした。
塚田
今まではお客様第一優先という想いでしたが、谷井さんと話す中で、そうじゃないなと。社員、身近な人から大事にしよう、だからお客様を大切にできると。お客様があっての会社ですが、そもそも社員がいないと成り立ちませんので。
谷井
社長の中で、理想の会社や社員の幸せとはどのようなイメージですか?
塚田
特に中途採用で入ってきた人たちが口を揃えて言うのは、「塚田牛乳は夜の営業がないし、休みがしっかり取れる。それが一番良い」って聞きます。当社はシフトを組んで休めます。子供の行事があっても参加できるし、家族の時間とか休日を大事にしたい人にとっては良い職場だと思います。社員の家族、身内、子どもとかに「ウチのお父さん塚田牛乳で働いているんだぜ」と塚田牛乳で働くことに誇りを感じて貰えるような会社でありたいです。あとは、社員が定年退職するときに「塚田牛乳でよかったです」とか。そんな風に言ってくれたら一番ありがたいです。
原価計算、ロス削減
谷井
元々、斎藤さんが標準原価を作られていましたが、弊社の笹口が改めて見直しさせていただきました。廃棄の数量は記録されていましたが、内容の検証や廃棄の金額計算はされていない状況が分かり、金額算定するとかなりの金額を廃棄していることが発覚しました。
斎藤
月いくら廃棄しているという数字が出てくるようになり、「なぜこんなに廃棄になったのだろう、これ減らせるよね。」という議論ができるようになりました。数百万円の改善に繋がりましたし、現場はまだ減らせると自主的にチャレンジし続けています。また、標準原価の廃棄率も実態と0.5%程度ですが異なることが分かりました。この0.5%が意外とインパクトあるので、気付けて良かったです。
12年ぶりの黒字について
谷井
結果的に12年ぶりに黒字化しました。
塚田
あまり人には言っていませんが、社長就任して5年経って結果が出なければ、社長に向いていない。別の選択肢も考えていました。しかし、就任4年でなんとか黒字化を達成しました。
谷井
改めて黒字化できてどのような心境でしたか?
塚田
実感はないですね。今期も来期も続けていくことが大切だと思っています。投資や設備更新もあるし、まだ厳しい状況は変わらずですが、少しでも社員に安心を与えることができたのではと思います。
斎藤
やっとかっという感じが1つと、黒字になったから安心できるとかは全然ないです。それでも、ちゃんと前には進んでいるという結果にはなったかなと思います。また、社員の方に伝えられるっていうのは大きいです。今まで色々改善をやったけど、効果は出ていますと伝えられたことは大きかったです。
人事評価制度への着手
谷井
黒字化したタイミングで弊社の渡部が支援させていただき、人事評価制度(Lポジション®人事制度)構築に踏み切っていただきました。どのような思いがありましたか?
塚田
評価制度については以前より考えていました。現在は各部門長とかの目線で評価していますが、どうしても納得感という点で難しい。明確な評価基準が欲しいよね、というのはずっと思っていました。自分の仕事に対してみんなが納得して取り組んでほしいので。
谷井
今回弊社で取り扱っている「Lポジション®人事制度」を選んでいただきましたが、何か決め手とかってありました?
塚田
谷井さんだからですね(笑)。でも、自分なりに色々な評価制度を調べたり、経営者向けの講習会など話は受けたりしていましたが、経営者が作るものがほとんどで、しっくり来ませんでした。Lポジション®人事制度は、従業員と経営者が一体となって作っていくところが一番魅力的でした。
谷井
ありがとうございます。実際、今人事制度の構築を進めている途中ですが、いかがですか?メンバーの雰囲気など。
塚田
メンバーはみんなやる気が入っている感じを受けます。最初、プロジェクトメンバーに選抜した時は、え?みたいな顔していましたが(笑)。初回の録画を振り返って見たりしますけど、今は全然雰囲気が違いますね。
斎藤
そうですね。1回目の雰囲気からはだいぶ変わっています。元々、人前で話すのが苦手なメンバーもいましたが、それを乗り越えて、一生懸命やっていきたいという気持ちになっています。
塚田
Lポジション®人事制度を作る時間が社員の成長のチャンスだと感じています。焦らず良い制度を作りたいですね。
弊社の良いところ
谷井
弊社が携わらせていただいた中で印象的だったことや、頼んで良かったと思うことはありますか?
斎藤
谷井さんは会計のプロですが、それだけではなくビジネスや人材、マネジメント的な方面にも知見があるので、その点は非常に良かったです。そこまで多方面に明るい人はあまり会ったことがないです。あとは、谷井さんは何でも相談できるというのもありました。そういう人柄の部分でしょうか。全社員の前で谷井さんがお話しされる機会がありましたが、「塚田牛乳は地元の誇りです!」と言われていたのがとても嬉しかった。こんなこと言ってくれる人っているんだなと思いましたし、社員もそんなこと言われる機会がないので、喜んでいたのは印象的でした。
塚田
私は、一緒に価値観を作れたのが一番大きかったです。方向性が明確になりました。あとは業界以外の色々な情報を知ってらっしゃるので、そういった情報を常にいただけるのはありがたいですね。
今後の期待
谷井
今後、更に期待いただけるところはどんなところでしょうか?
斎藤
今まで伴走型でいろんなことを一緒にやってきました。その時々で必要なものを察してくれたり、こっちから相談すると何かしら提供してくれたりするので、今後も色々な課題や会社のニーズが出てくると思いますが、引き続き対応していただければ嬉しいです。
塚田
実は60歳までの構想を作っていて、いろんなパターンのシミュレーションをしています。そういった中長期の計画についても相談したいと思っています。色々な選択に迫られると思うので、そういったことも含めて年齢も1つ違いですし、長くお付き合いさせてもらって、ずっと一緒にできればなと思います。
谷井
こちらこそ、長いお付き合いをよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。